シリコンバレー101 (697) クロネコも耐えられないネット通販、米国ではどのように対処しているか

ウチは年会費99ドルのAmazon Primeのメンバーで、ティッシュや洗剤までAmazonから買っている。石けん6個パックとかでも、無料で2日後配達してもらえるPrimeの対象製品だったら即購入、買い物がまとまるのを待たずに単独で配達してもらうこともある。それで「もったいない」とか、配達員の人たちに「悪いなぁ」と罪悪感に苛まれることはない。Amazonが使っている宅配サービスや配送サービスが適当で、そしてあらゆる点で無理をしないからだ。

日本に滞在している時に日本のアマゾンでもよく買い物をするが、日本の宅配便の素晴らしいサービスには感動する。配達日を守るだけではなく、時間帯まで指定できて、再配達のスケジューリングもスムース。しかも、ちゃんとその時間に届けてくれる。

米国はどうなのかというと、Primeは「2日後配達」になっているが、正確には「2~3日後配達」だ。それすら厳守されず、天候不順やホリデーシーズンでもないのにAmazonから突然「予定よりも荷物が遅れています」メールが届くことがある。そのメールが送られてきたら、さらに2~3日の遅れを覚悟しなければならない。

じゃあ、Primeに年額99ドルも支払う意味ないじゃないと思うかもしれないが、もしPrimeでなかったら、注文した商品が届くのが一週間後になったりする。それに比べたら2~3日後配達のPrimeは素晴らしいし、2~3日以内の配達であってこそAmazonが本当に便利なものになる。だから、Amazonを便利に使うためのお布施のように、私は年額99ドルのPrimeメンバーシップを払っている。

配達日が適当なのはまだ序の口で、日本から来た友達が心底驚いていたのは、荷物を届けにきた配達員がドアをノックして、そのまま立ち去ることだ。ドアを開けた時に、配達員はすでにトラックに乗って次の配達に移動し始めている。荷物は玄関の横に置きっ放し。もし不在だったら、そのまま放置されることになる。

配達員はドアをノックまたは呼び鈴を鳴らすだけで、Amazonの荷物をドアの前に置いて去って行く

本人確認をせずに配達するから誤配もよく起こる。ウチは昨年3回、Amazonの荷物が行方不明になって、いずれも近所への荷物に紛れ込んでいた。見つかったらラッキーで、配達完了した荷物が行方不明のままということも珍しくない。その時はしばらく待ってからAmazonに連絡するとスムースに再発送してくれる。Amazonもある程度の紛失を織り込み済みなのだろう。

誤解を招かないように、もう少し詳しく説明すると、米国の宅配便も受け取り人署名で荷物を渡すのが基本的なサービスで、置きっ放しは低コストを優先した特別なサービスである。また、いつでもどこでも玄関の前に置いて立ち去るのではなく、紛失や盗難のリスクが高い地域では安全な配達を徹底するし、紛失のレポートが続いた届け先に対しては在宅時のみの配達に切り換える。

Appleストアからの荷物は高額製品が多く、ほとんどが受け取りに署名が必要になるが、Apple Pencilのようなアクセサリは「No signature required」

Amazon傘下の配送サービスAmazon Logisticsの説明を読むと、届け先が不在の場合、安全な場所に荷物を置いて去る。安全な場所がなかったり、受け取り人が必要な商品の場合は不在通知を残す。

ウチは完全に安全な場所と判断されているようで、Amazonからの荷物は全て置き去りだ。たしかに、玄関横の植木の陰に置いてくれてはいるが、それが「安全な場所」と言えるかは微妙なところで、ほとんどのAmazonの箱はちゃんと隠れていない……。

置いて去ることで宅配業者は再配達せずに済むし、不在の時でも荷物が置かれているので受け取り人が不在通知を見つけてがっかりということにもならない。置きっ放しを好むオンラインショッパーも多く、近所の紛失レポートの影響で在宅配達に切り替わってしまって、それで「不便になった」と文句を言う人もいる。でも、置き去りで簡単に荷物を盗まれてしまうのも事実であり、ホリデーシーズンになると玄関先に置かれたままの宅配荷物を盗んで歩く「Porch Pirates」が出てくる。

だから、玄関にセキュリティカメラを付けたり、宅配ボックスを置いたり、高額な買い物の時にはコンビニに置かれたAmazon Lockerを使ったり、ウィークデーは会社に送ってもらったり、近所づきあいに努めたり、Amazonユーザーは様々な対策を講じる。負担だが、オンラインショップを便利に使うためのコストと受け止めるしかない。

Web 2.0で誕生した適当な宅配

米国でもオンラインショップからの荷物の配達が昔から適当だったわけではなく、オンラインショップが台頭し始めた頃は受け取り人署名の宅配が当たり前だった。でも、それまでの宅配サービスの配達料金は高すぎて、送料の問題を解決しないとローカル小売店に太刀打ちできない。Amazonなどオンラインショップは宅配業者と交渉した。だが、従来の宅配サービスを維持しながら、しかもより安くより速くというオンラインショップ側の要望に応えて、オンラインショップの急速な成長に付き合っていったら宅配サービスはパンクしてしまう。既存の宅配サービスのままでは対応しきれない。そこでWeb 2.0の頃に、荷物を置いて立ち去るという従来の宅配の常識を覆すオンラインショップ向けの配送サービスが登場し始めた。

玄関の前に置き去りにされたAmazonからの荷物を見る度に、なんか間違っていると毎回感じてしまう。盗難や紛失のリスクを伴う宅配なんて宅配と呼べるものではない。一方で、この"適当"によって、ネット通販をより便利に、安く、スピーディに使いたいという要望が満たされ、Eコマースの急速な成長にブレーキがかからないバランスが保たれている。日用品もAmazonから買えるのは本当に便利だ。だから、私はAmazonを便利に使うために"適当"を受け入れて、玄関にセキュリティカメラを設置し、Amazonアプリや宅配業者のアプリから配達完了の通知をiPhoneまたはApple Watchで受け取れるようにしている。

ネット通販の荷物の増加、再配達の負担でヤマト運輸の配達員の長時間労働が慢性化し、しかも利益が圧迫されている問題が日本で話題になっているが、米国のAmazonユーザーの視点だと、宅配便が特別な荷物だった頃のままのサービスで、それどころかより複雑になって、今日のネット通販に対応していることに驚愕する。丁寧・確実に荷物を運んでくれる日本の宅配便サービスはおそらく世界一だ。その信頼と便利さは今後も継続されていくべきだと思うし、間違いなく今後も必要とされる。一方で、人々はネット通販により安く、より速くを求める。その全てが満たされれば良いが、残念ながら歪みが生じている。

我慢しない米国では、ずっと昔に「適当な宅配」という適当なソリューションが編み出されたが、日本も適当な宅配を導入するべきと言いたいのではない。宅配ボックスのようなユーザー側の改善ももちろん必要ではあるが、急成長するネット通販への対応は宅配便サービスだけの問題ではない。米国では2013年に米国郵便公社USPSとAmazonが提携して、USPSの郵便サービスでもAmazonの荷物が配達されるようになった。Eメールの影響による売上減に悩まされていたUSPSにとっても渡りに船の提携だ。Eコマース時代の流通にはマクロな視点でも対処していくべきであり、そうしないと世界一の宅配便サービスが失われるという残念な未来になりかねない。

※本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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